・ 策書中の竹簡の枚数と編綴

竹簡を束ねる紐について

近年出土している策書は、簡牘を結ぶ横糸のほとんどがすでに朽ちてしまって残っていません。そこで下のCGでは劉歆《七略》(《文選・任昉為范始興求立太宰碑表》李善注所引)にある「《尚書》に青絲編の目錄有り」という記述にしたがって、緯編(よこいと)を青く染めた絹糸にしてみました。もっとも、こうした染色された糸が利用されるのは、どちらかといえば特殊なケースです。一般的に竹簡を束ねる緯編は絹の紐か麻の縄を用いることが多いようですが、糸の色に言及されることは稀なので、恐らくは染色されていないものを用いるのが普通だったのでしょう。

紐の材質については絹・麻とは別に革を用いていたという説が古くからあります。晩年の孔子が「韋編三絶」するほど《易》を愛読した(《史記・孔子世家》)というのは有名な話ですが、この「韋編」は伝統的には竹簡を束ねる「革紐」であると理解されてきました。けれども、すでに林小安・冨谷至両氏が指摘している通り、「韋」は「緯」の省文で、「韋編」は「革紐」ではなく、本当は単に「よこいと」と理解すべきでしょう。竹簡を束ねるのに革紐を使うというのは、あまり現実的な選択肢とは言い難いですし、現に革紐で竹簡を組んだ形跡が認められる事例は、管見の及ぶ限りありません。

一篇(一束)の策書は何枚の竹簡で構成されている?

下のCGの策書では長さ一尺二寸(約27.8cm)の竹簡を 138枚束ねているケースを想定しています。よく一篇の策書ってどのくらいの分量があるのかと聞かれますが、これには別段有効な解答はありません。10枚前後のこともあれば、150枚を超えることもあるようです。そもそも竹簡は、束ねる量を自由に設定できる(=拡張・削減が容易である)点で優れている訳ですから、これに一定の制限を定めてしまってはその長所をかえって損うことになってしまうことになります。

策書