孫啓治・陳建華編、中華書局刊。先秦~南北朝期に作られた書物の内、既に亡佚して現存しない書物(※これを「古佚書」という。)、もしくは一部ないし大半が欠損した状態で現存している書物の佚文(※別の古い書物の中で引用されている文のこと。)を集めた「輯本」(「輯佚書」ともいう)の目録。佚文の収集状況や優劣(条文比較による収集漏れの指摘など)の評価も注記されており、古代・中世の古文献を扱う者には何かと重宝する工具書である。ただ、時折収録漏れが見られるため、『中國叢書綜錄』などの他の工具書によって利用者の側が適宜情報を補う必要があり、本書があれば全ての用が足りるというわけではない。特に孔穎達が『春秋左傳正義』を撰定するに当たってたたき台にしたとされる劉炫の『春秋左傳述義』が落ちている点などは痛恨である。とはいえ、輯佚が必要な古文献を扱う者にとって、本書が必見の工具書である点は依然として変わりない。
なお、貪欲に佚文収集を行いたい方は、既成の輯本や佚文検索のほか、京都大学人文科学研究所が日本の古典籍中に埋もれている漢籍古文献の佚文を収集した労作『本邦殘存典籍による輯佚資料集成』(正・續)を刊行しているので、併せて利用されることをおすすめしたい。(文責:齋主)