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漢書藝文志漢書藝文志 (附:歴代正史藝文經籍志)
【かんじょげいもんし】

正史『漢書』の図書目録部分であるが、今となっては佚してしまった最古の図書目録である劉歆の『七略』をほぼ含んでいる点でも貴重であり、中国書誌学研究のうえで最も基礎的な資料となるものである。利用するには、顧實『漢書藝文志講疏』(上海古籍出版社)、陳國慶『漢書藝文志注釋彙編』(中華書局・二十四史研究資料叢刊)がよい。なお、『隋書』の「經籍志」も書誌学上重要であり、興膳宏『隋書經籍志詳攷』(汲古書院)が参考になる。また、『新』『舊唐書』の「經籍志」「藝文志」については『唐書經籍藝文合志』(商務印書)が、両書を上下で対応させていて便利である。

□補足
 『漢書』藝文志については、以上のほか、王應麟『漢藝文志考證』、姚振宗『漢書藝文志條理』(いずれも『二十五史補編』第二冊所収)が古佚書の考証も含んでおり、参考に値する。

『漢書』藝文志は、通常、顧實『講疏』で充分用が足りるものの、類似の書名が複数箇所に散在する例については、「蓋非同書」とするばかりで、明確な説明を欠いている。この欠点を補う意味では、(時代は前後するが)『漢書藝文志』全体を論じた章學誠『校讐通義』(王重民『校讐通義通解』上海古籍出版社)や、それをもとに今一歩踏み込んだ体例整理を行った、孫徳謙『漢書藝文志舉例』(『二十五史補編』所収)の「互著」「別裁」説を本来なら理解しておく必要があろう。

両『唐書』に関しては、目録学的な価値があまり認められない為か特にめぼしい注釈書もないが、利用にはいささか注意を要する。『舊唐書』經籍志の方が『古今書録』という唐代の現存書目を基にして書かれているのに対し、『新唐書』藝文志の方は依拠した資料がはっきりしていない。研究者によっては、或いは宋代に入ってから確認された書物もあるのではと疑う場合もあるので、唐代の現存書目として利用する場合は『舊唐書』經籍志を利用する方が確実である。しかし『古今書録』編纂以降の唐代の書物を知りたい場合には、やはり『新唐書』藝文志が必要になるので、両者の使い分けが要求される。

猶、両『唐書』以降の正史の目録は、目録学的にも価値が低く、資料的信頼性にも問題があるので、むしろ『郡齋讀書志』や『直齋書録解題』『四庫全書總目提要』など、官撰・私撰の専門の目録書(その多くは解題付き)を利用するのが望ましい。

e-text
 勝山稔氏「北海道漢籍データベース」(S-JIS)【定】
  (中華書局、標点本二十四史)
(※S-JISエンコード・テキストをLzh形式に圧縮したものを配布している。JIS外漢字はゲタ「〓」表記。「漢書藝文志」「隋書經籍志」「舊唐書經籍志」「新唐書藝文志」「宋史藝文志」「明史藝文志」「清史稿藝文志」を公開中。)

'99,10,4、齋主補足)

制作・著作:澁澤 尚 / 秋山 陽一郎
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