井真成墓誌
原文
贈尚衣奉御井公墓誌文并序
公姓井字眞成國號日本才稱天縱故能
■命遠邦馳騁上國蹈禮樂襲衣冠束帶
■朝難與儔矣豈圖強學不倦聞道未終
■遇移舟隙逢奔駟以開元廿二年正月
■日乃終于官弟春秋卅六皇上
■傷追崇有典詔贈尚衣奉御葬令官
■卽以其年二月四日窆于萬年縣滻水
■原禮也嗚呼素車曉引丹旐行哀嗟遠
■兮頹暮日指窮郊兮悲夜臺其辭曰
■乃天常哀茲遠方形旣埋于異土魂庶
歸于故鄕
( "■" は判読不能字。)
訓読文 (秋山 試読)
贈 尚衣奉御 井公 墓志文 并序
公 姓は井、字は眞成、國號は日本。才は天縱に稱(かな)ひ、故に能(よ)く命を遠邦に■し、騁を上國に馳せり。禮樂を蹈(ふ)み衣冠を襲ひ、束帶して朝に■すること、與(とも)に儔(なら)び難し。豈に圖(はか)らんや、學に強(つと)めて倦(おこた)らず、道を聞くこと未だ終へずして、■ 移舟に遇ひ、隙 奔駟に逢へり。開元廿二年正月■日を以て、乃ち官弟【=官第。官邸・官舎の意】に終へり。春秋卅六。皇上 ■傷して、追崇するに典有り。詔して尚衣奉御を贈り、葬むるに官をして■せしめ、卽(すなは)ち其の年の二月四日を以て萬年縣の滻水■原に窆(はうむ)るは禮なり。
嗚呼(ああ)、素車 曉に引きて丹旐 哀を行ふ。遠■を嗟(なげ)きて暮日に頹(たお)れ、窮郊に指(およ)びて夜臺に悲む。
其の辭に曰く、
乃(そ)の天の常を■し、茲(こ)の遠方なるを哀しむ。形【=その身】は旣に異土に埋むれども、魂は故鄉に歸らんことを庶(ねが)ふ、と。