・ 十三經注疏 (じゅうさんけい ちゅうそ・じゅうさんきょう ちゅうそ)

・ 13種の儒教の根本経典とその伝統的・基本的な注解

儒教研究の基礎となる十三種の経典を、その解説(注・疏)とともに集めたもの(中国最古の辞書である『爾雅』もふくまれる)。南宋末に刊行されたが、時代を経るにつれ脱誤が多くなったため、清の阮元が家蔵の宋本等をもとに校勘し刊行した。これが現在一般に「十三經注疏」と呼ばれるものである。使用に当たっては、藝文印書館の影印本(8冊)よりも中華書局が縮印・影印した2冊本が字が小さいながらも便利。対応する索引として葉紹鈞編『十三經索引(重訂本)』(中華書局)、また最近刊行された完全な一字索引の『十三經新索引』(中國廣播電視出版社)がある。

書名
周易正義  [魏]王弼 [唐]孔穎達
尚書正義 [漢]孔安國  [唐]孔穎達
毛詩正義 [漢]毛亨・毛萇 [漢]鄭玄 [唐]孔穎達
周禮注疏  [漢]鄭玄 [唐]賈公彦
儀禮注疏  [漢]鄭玄 [唐]賈公彦
禮記正義  [漢]鄭玄 [唐]孔穎達
春秋左傳注疏  [晉]杜預 [唐]孔穎達
春秋公羊傳注疏  [漢]何休 [唐]徐彦
春秋穀梁傳注疏  [晉]范甯 [唐]楊子勛
論語注疏  [魏]何晏 [宋]邢昺
孟子注疏  [漢]趙岐 [宋]孫奭
孝經注疏  [唐]玄宗 [宋]邢昺
爾雅注疏  [晉]郭璞 [宋]邢昺

これら経書に関しては、それぞれに使いやすい訳注書が中國から出版されている。中でも、中華書局の「中國古典名著譯注叢書」、上海古籍出版社の「中華古籍譯注叢書」のシリーズからは丁寧で使いやすいものが出ている。前者には、楊伯峻『春秋左傳注』(これに対応する『春秋左傳詞典』も中華書局から出版されている)・『論語譯注』・『孟子譯注』、胡平生『孝經譯注』等があり、後者には楊天宇『禮記譯注』・『儀禮譯注』、王維堤『春秋公羊傳譯注』等がある。台湾の商務印書館からも「古籍今註今釋」として注釈書が出版されている。また、『詩經』は文学作品でもあるわけであり、中華書局「中國古典文學基本叢書」から程俊英・蔣見元『詩經注析』が出ている。『詩經』に関する諸書については、蔣見元・朱杰人編『詩經要籍解題』(上海古籍出版社)參照のこと。

・ 齋主付記

Additional Notes

2000年に北京大学出版社が刊行した簡体字標点本『十三經注疏』(李學勤主編。底本は清嘉慶南昌府學本(※実は道光重刊本)。阮元・孫星衍の校勘記を附す)に引き続いて、2001年には同出版社から今度は繁体字標点本が、更に台湾・新文豐出版公司からも繁体字標点本(周何氏主編。底本は南昌府學本。阮元の校勘記を附す)が刊行された。

Web Resource

中研院の漢籍電子文獻は注疏や校勘記も検索対象になっている点で非常に便利だが、句読が施されていない上に文書構造が把握しづらく、使い勝手では経文のみの寒泉の方が勝る。十三經注疏の場合、経・伝・注・疏・音義・校勘記を区別できるかどうかは利用する上での生命線に繋がるため、テキストの構造化マークアップが今後急務となる。

無償検索サービス ― Web Search Systems
サイト名Encoding底本Feature
中央研究院
漢籍電子文獻
Big5『十三經注疏附校勘記』
(藝文印書館)
経伝注疏及び阮元校勘記を含む。
句読なし。
『斷句十三經經文』
(開明書店)
経文のみ。読点のみ付す。
中央研究院
漢籍電子文獻
UTF-8『十三經注疏附校勘記』
(藝文印書館)
注や陸徳明音義、阮元校勘記などを JavaScript で制御して表示・非表示が自由に切り替えられるようにしている。また検索結果一覧が KWIC 形式で表示されるようになった。
寒泉Big5『十三經注疏附校勘記』
(藝文印書館)
経文のみだが、句読を付す。

その意味で興味深いのは、2004年になって公開された中央研究院の新版漢籍系統3.0測試版で、これは注や陸徳明音義、阮元校勘記などを JavaScript で制御して表示・非表示を自由に切り替えられるようにしている。ただ、疏を本文扱いにして、(伝・)注・音義・校勘記を一緒くたに「校」にしてしまっているなど、経→伝→注→疏→校勘記という基本的な構造や枠組みが崩れてしまっている。検索結果の一覧を KWIC 形式で表示するなど、ユーザビリティ面でも工夫がなされており、決定版になりえる可能性は充分に感じさせるのだが、このままでは従来のものよりも使い勝手が悪いため、今後ますますの改善を期待したい。

電子テキスト ― e-archives
サイト名Encoding底本Feature
雨粟莊
倉頡計畫
(師尾潤氏)
JIS江戸~明治期の各種和刻本公開しているのは、《易經》《書經》《詩經》《禮記》と四書。いずれも新注(宋学)系のテキスト。JIS補助漢字以降は eKanji(画像)などで代替表記。
中華文化網Big5漢籍電子文獻?
『斷句十三經經文』
 

今や中国を中心に、四庫全書や四部叢刊など、十三経を含んだ電子データが多数商品化されており、単純に検索できるというだけでは価値を持たなくなってきている。異体字同一視検索や、ソース別検索、異本比較システムといった工夫がこれからの課題となるだろう。同時にテキストの精度向上も急務といえる。底本選定・校訂基準の策定・俗字の取り扱い・版権処理・各種情報開示などの基本的な要件を満たしていないサービスや商品が多く、現状では研究利用に堪えうる電子データはほとんど皆無に等しい。電子データの選択肢が大幅に増加した今日にあっても、研究者による高品質なデータの発信の必要性はまったく衰えていないといっていい。