要旨( abstract )
劉向本戰國策が内包する先行説話群について
(『立命館史学』25、2004-10)
『戰國策』33篇は、紀元前1世紀末(前漢末)に、当時あった宮廷内外の書物を網羅的に整理した劉向によって整理・編集された、戦国時代(4c. B.C.~221B.C.)の故事を扱った説話集である。その編集にあたって劉向は、宮中の祕府にあった「國別者八篇(国別の者八篇)」をベースにしたとされる。筆者はすでに「姚本戰國策考 ―劉向本旧態保存の是非と劉向以前本復元への展望」(立命館東洋史学会刊『中國古代史論叢』所収、2004)において、現行する南宋の姚宏校定本(以下「姚本」)《戰國策》が劉向本の旧貌を保存していること、および劉向本に内包されていると予想される先行説話群の存在を確認した。本稿では具体的に姚本三十三篇を劉向が参照した先行説話群の原貌に分解することを目的とする。
姚本《戰國策》には、一定の人物ないしテーマに沿った章が団塊的に並んでおり、それを細かく分類していくと、最低でも東周策・西周策両篇が併せて4群、秦策5篇が13群、齊策6篇が11群、楚策4篇が9群、趙策4篇が17群、魏策4篇が15群、韓策3篇が10群、燕策3篇が9群、宋衞策が2群(宋と衞で各1群)、中山策が4群の最低限都合94群の説話群で構成されていることが確認された。現行本のみから劉向校書以前の体裁の復元するという、いささか大胆な試みだが、本稿における分解手法は、他の劉向校書事業以前の古文献に対しても大なり小なり有効なものであると思われ、校書事業以前の伝本の体裁や流布状況、ひいては個別の著作群における書き手の解明に幾ばくか寄与するところがあろう。
[ このページの先頭に戻る ]